同じ着想のお話があるかも知れませんが・・・
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2021年春、インターネット上でオセロ協会主催のネットオセロ大会が開催された。コロナ禍で現実の大きな大会が困難になったこともあり、協会員には歓迎された。
ツイッター上で伝えられた大会速報によると優勝者は長谷川彰となっていた。何でも、全試合ほぼ最善手を打ち続けたそうだ。明らかにソフトを使った不正だろうということで失格になり、公式の発表には載らなかった。
ツイッターではアニメアイコンのオタクっぽい人が「私が優勝したのに失格にされた」などと文句を書きまくっていたが、誰にも相手にされず、この件は忘れられて行った。協会の処分はネット大会1年間出場禁止であった。
ところが、2021年秋のインターネット大会にも長谷川彰が出場した。しかも2人。開催前に協会が身元をチェックするのにどういうことなのか?と問い合わせが殺到したそうだが、協会の公式発表では「2人とも本名であり住所が異なる」「出場停止の長谷川彰氏とは別人」ということで、そのまま開催された。今度の長谷川彰「たち」の成績は、2人とも最下位近くであった。
2022年、すっかりコロナ禍は終了し、現実の大会が再開された。異変が起きたのは、名人戦という、協会員が参加費を払えば参加できる大会である。何と、12人の長谷川彰がエントリーしたのである。これにはネットがざわついたが、何のことはない、いつの間にか「長谷川彰の会」という会ができていて、全員で名人戦に参加しただけであった。その中に、以前失格になった長谷川彰もいた。
結果は、長谷川彰は4位と25位と38位、あとは最下位近くに長谷川彰の塊。以前不正と言われた長谷川彰が4位で、後に「ほら見ろ!不正じゃなかっただろ!」と主張しまくったが、以前の幻の優勝のときのような圧倒的な強さではなかった。真相は闇の中。
理事のK氏「やれやれ、やっと終わったか。長谷川彰A、B、C、D…なんて結果表に書くこっちの身にもなって欲しいよ。」
理事のN氏「ところで、鈴木一郎さんも2人参加していますが…」
理事のK氏「ああ、よくありそうな名前だし、偶然でしょう。」
そして、2023年の名人戦には、長谷川彰が28人、鈴木一郎が41人参加したのであった。
空想小説「同姓同名」
