ソフト打ちはリバーシの世界では古い問題である。1997年にオセロの世界チャンピオンがコンピュータ(パソコン)のソフトに6連敗してニュースになった。チェスのチャンピオンが負けた時期とそんなに離れていなかったと思う。

その後、インターネットでリバーシの対戦が誰でも普通にできるようになり、「ソフト打ち」が行われたり、「ソフト打ち」の疑惑をかけられる人が増えたりした。別にプロではないし違法ではないが、ずるいので叩かれるに決まってる。

ある外国人選手は、現実の世界で面と向かって対局している最中にソフト打ちをするという荒業を使ったという。服の間に携帯端末を忍ばせて・・・きいた話だと足だったというが、それでどうやってソフト打ちをできたのか、疑問は残る。彼はレーティングの計算から除外され一定期間出場停止といったペナルティを受けたと記憶している。

何が言いたいかと言うと、リバーシの人たちはソフト打ちがどういうものか、もう15年かそれ以上思い知らされてきたということである。ソフト相手に知らない局面になれば、かなり強い人でもボロボロに負ける。ソフトに対抗する最も有効な手段は暗記である。「知っている」局面で、そこからの最善手順も「知っている」という状況になれば、ソフト相手でも引き分けになるし、ソフトの持っている定石の穴を見つけて暗記することができれば勝てる。

そして、人間がソフトの手を真似するようになる。ソフトを使って研究しまくった人が定石の流行を牽引する。

ゲームが違っても理屈は同じで、人間よりソフトが強いことを認めるなら、将棋だってこれからはソフトの手を人間が真似して定跡を開拓して行くようになる。それを既にやっているのが、問題になっているプロ棋士ではないだろうか。

つまり、「ソフトと同じ手を指した」という現象があったとしても、それは対局の合間にカンニングしなくたって暗記していれば指せるのだから、それ自体はソフト指しの証拠にはならないのである。

だから、対局の合間にスマホをいじっていて、かつ、画面上に実戦と同じ局面が再現されているのを現場を押さえて確認できなければ、ソフト指しと認定するべきではない。将棋連盟はソフト指しと断定はしていないはずだが、どうもマスコミは安易に決めつけているように見える。

週刊誌にも載るらしいが、普段から真実の報道というよりは、ただ人々の興味を集めて売れれば良いという姿勢だろう。それでしょっちゅう訴えられているではないか。まことしやかに「証言」をする人が現れたりしても、全く信用できない。

結果的にソフト指しだったということになるかも知れないが、それは本人が認めるなど強い証拠に基づくものであるべきで、ただ「ソフトと同じ手」というだけできめつける姿勢の人たちは全く愚かに見える。ソフト打ちを十数年見聞きしてきた立場では、棋譜のみから100%ソフト打ち(指し)ときめつけることはできないのは良く分かっているのである。

プロで大金もかかっているだろうに、見方によっては、「タイトルホルダーが盤外戦(圧力)で挑戦者を変更させた」ようも見えてしまう。下手をすると今度はそちらが新たな疑惑となってしまうだろう。どう転んでもプロのイメージダウンであって、真実が不明のままの将棋連盟の「処分」は悪手だったと思う。

タイトル戦はそのままの挑戦者で行えば良かった。ただし、その建物に入る人は携帯端末を持ち込まない、玄関で預ける。トイレも複数人でついて行く。何なら金属探知機で検査するなど、絶対にスマホを使えない「性悪説」でやってみれば良かったのではないだろうか。